糖尿病の検査

糖尿病が
疑われる際に行う検査

問診

診察糖尿病は進行するまで自覚症状が現れにくいため、問診・採尿・採血などの検査によって、患者様の病状を的確に把握することが重要です。当院では問診の際に下記のような内容を丁寧に伺っております。

  • 現在の体調
  • 既往歴
  • 自覚症状
  • 糖尿病の家族の有無
  • 直近の体重変化
  • 食習慣や運動習慣
  • 飲酒喫煙の有無と程度
  • ストレスの有無

など

尿糖検査

採取した尿に含まれるブドウ糖の量を調べる検査です。ただし、尿検査で尿糖陽性となった場合でも血糖値に異常がない場合もあります。尿検査で尿糖陽性の場合は採血による血糖測定検査やブドウ糖負荷試験を行って確定診断します。

血糖測定検査

血糖値は直前の食事に影響されますので、空腹時血糖検査として10時間以上食事をしていない状態で採血を行います。一般的には当日の朝食を食べない状態でご来院いただき採血を行います。空腹時血糖値が126mg/dL以上の場合、糖尿病と診断されます。
さらに、空腹時血糖検査後にブドウ糖液を飲んでいただき、その後の数値の変化を確認するブドウ糖負荷試験を行います。この検査ではインスリンの分泌の状態を把握できます。
また、食事時間に関係なく行われた採血で計測した血糖値は、随時血糖値と呼ばれます。糖尿病は空腹時血糖、随時血糖値、ブドウ糖負荷試験のどれか1種類の検査で基準値を超えた状態で疑われ、別日に同じ検査を行って基準値を超えた場合に確定診断されます。また、空腹時血糖、随時血糖値、ブドウ糖負荷試験のどれか1種類の検査で基準値を超え、HbA1c6.5%以上の場合にも糖尿病と確定診断されます。

HbA1c

HbA1cとは

HbA1c値は赤血球の中のヘモグロビン(Hb)というタンパク質全体で、ブドウ糖が結合している割合を現す数値です。ヘモグロビンにブドウ糖が結合すると離れることはなく、赤血球は120日程度生存しているため、1~2か月前までの血糖値の平均値を把握できます。直近の食事や運動などに左右されないため、糖尿病の診断や治療効果の評価、合併症リスクの判断にも欠かせない検査です。

血糖値との違い

血糖値は直近の食事や運動、採血の時間などの影響を受けて変動しますので、その瞬間の状態は詳細に分かりますが、採血した時以外の血糖値の変化や平均値を知ることはできません。また、糖尿病は進行すると血糖値の変動が大きくなり、健康診断などで行う空腹時血糖の検査では低く出て発見が遅れるケースもあります。
HbA1cは、高血糖や低血糖の影響も反映されますので早期の糖尿病を発見しやすく、進行して空腹時血糖が低く出るケースでも診断に大きく役立ちます。

HbA1cの正常値

日本糖尿病学会では、HbA1cの数値を下記のように定義しています。なお、メタボリックシンドロームでは数値がそれほど高くなくても動脈硬化の進行が促進されてしまうため、特定保健指導ではHbA1cの正常値を5.6%未満としており、それ以上の場合には糖尿病予備群として指導や経過観察が必要とされています。

4.6〜6.2% 正常値
6.0〜6.4% 糖尿病の可能性がゼロではない
6.5%以上 糖尿病の可能性が高い

性別や年齢に関係なく5.6%未満は正常値とされています。糖尿病の診断を過去に受けている場合、合併症のリスク低減にはHbA1c値7.0%未満を保つことが推奨されています。ただし、年齢や他の疾患の有無、服用している薬、認知機能などにより目標値が変わることもあります。糖尿病治療では高血糖だけでなく、危険な低血糖にも十分な配慮が必要です。

糖尿病の合併症検査

血管の検査

動脈硬化・血管年齢検査(ABI)

ABI検査は足の血管に生じた動脈硬化の進行度合を数値で表して確認できる検査です。高血糖、高血圧、脂質異常などで動脈への負担が続くと、動脈は柔軟性を失って硬くなり、血管壁に脂質が付着して狭窄や閉塞を起こすリスクが高くなります。足関節と上腕の収縮期血圧を調べ、その比率を算出した数値によって評価します。1.0〜1.3が正常値になっており、数値が低いと重症度が高いと判断されます。足の血管に動脈硬化が起こっている場合、全身でも動脈硬化が生じていると判断でき、合併症の状態把握だけでなく、全身状態の把握にも役立ちます。
重症度が高く足の血流が阻害されると下肢閉塞性動脈硬化症を発症し、足潰瘍や足壊疽が生じるリスクが高まります。足壊疽は最悪の場合、足の切断が必要になる深刻な状態です。
また、脈の伝わるスピードを計測でき、それによって血管年齢を把握できます。脈のスピードと年齢には相関関係があり、実際の年齢と血管年齢を比べることで動脈硬化の進行や血管の老化の程度を把握できます。

頚動脈超音波検査

頚動脈は首にある太い血管で、頚動脈分岐部を境に脳へ血液を送る内頚動脈と顔に血液を送る外頚動脈に分岐します。この頚動脈分岐部には動脈硬化が比較的早く起こりやすいとされており、頚動脈の血管壁の厚さから全身の動脈硬化の進行度合を判断できます。また、プラークの有無や状態なども確認できますので、脳卒中や心筋梗塞のリスクも把握できます。

糖尿病網膜症の検査

※当院では眼科の検査を行っていませんので、定期的に眼科を受診して検査を受けてください。

眼底は比較的早い段階で異常が現れやすく、定期的に眼科検診を受けることで糖尿病が早期発見されるケースもあります。ただし、糖尿病や糖尿病網膜症になっても、深刻な状態まで進行しないと自覚症状はほとんどありません。視力に異常がなくても、定期的に眼科検診を受けることをお勧めします。
なお、糖尿病網膜症になった場合でも早期に適切な治療を行うことで進行を抑制し、視力を維持できる可能性が高くなります。

眼底検査

網膜表面の状態を直接確認できる検査です。瞳孔から確認します。

蛍光眼底造影検査

蛍光造影剤を静脈注射した上で眼底を連続撮影し、網膜血管の閉塞や虚血の状態、脆く破れやすい新生血管の有無などを把握できます。

糖尿病の早期発見のために視力に異常がない方も定期的に眼底検査を受けることをお勧めします。網膜症を発症しても早期に発見できれば適切な治療によって病気の進行を抑制することができます。

糖尿病腎症の検査

糖尿病の三大合併症の一つである糖尿病腎症は、血液を濾過して尿を作る腎臓の機能に障害が生じて進行します。尿の濾過量や尿蛋白の状態により、病気は1~5期に分けられています。

第1期 (腎症前期) 自覚症状や臨床的症状はありません。
第2期 (早期腎症期) 自覚症状が現れないケースもありますが、血圧上昇を伴うこともあります。
第3期 (顕性腎症期) 蛋白尿が陽性になります。顔や手足などにむくみを生じる場合があります。
第4期 (腎不全期) 尿毒症を起こし、だるさや疲労感、貧血を起こします。長期間に渡って体重の増加やむくみがある場合はネフローゼ症候群が疑われます。
第5期 (透析療法期) 人工透析や腎移植に向けた準備が必要な段階です。

尿中微量アルブミン検査

アルブミンは肝臓で生み出されるタンパク質で、健康な場合は尿中に現れることはほとんどありません。腎臓への負担が大きくなるとアルブミンが尿中に現れることから、尿中のアルブミンを調べることは腎臓の機能を確かめるために有効です。
ただし、早期の糖尿病腎症で尿中に出てくるアルブミンはごく微量で、通常の尿検査では検出不可能です。早期発見には尿中微量アルブミン検査が必要となります。
当院では尿中微量アルブミン濃度に加え、尿中クレアチニン濃度を調べて比較しています。尿中アルブミンが30mg/gCr未満の基準値で第1期、30〜299mg/gCrで第2期と判断されます。第2期までは血糖値を適切にコントロールして血圧を下げることで基準値以下までの改善が期待できますが、重症化して尿蛋白陽性となる第3期に入ってしまうと基準値以下に下げることは困難になります。第4期以降はさらに改善が難しくなり、人工透析や腎移植の検討が必要になります。人工透析はQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を大きく下げてしまい、様々な疾患の発症・悪化リスクも上昇してしまいますので、できるだけ早く適切な治療を受けることが重要です。

尿蛋白検査

蛋白尿は、0.15g/gCre未満の正常、0.15g/gCre以上0.5g/gCre未満の軽度、0.5g/gCre以上の高度に分けられます。健康な方でも蛋白は尿中に流出し、発熱や過激な運動、ストレスなどで増加するケースがあります。そのため、他の検査や症状、状態などと総合的に判断することが重要です。

糖尿病の自己血糖測定

毎回の採血が不要な自己血糖測定「Freestyleリブレ」を導入しています

血糖測定これまでは自宅で行える血糖値測定として、指先に針を刺して少量の血液を採取し測定するものが一般的でした。この方法は測定時点の血糖値のみしか知ることができず、測定前の血糖値の変動については知ることができませんでした。
Freestyleリブレは、一度腕に装着したら2週間連続的に血糖値を知ることができ、血糖値のトレンドを見ることができる画期的な血糖測定器です。

こんな方におすすめです


インスリン製剤の自己注射を行っている方で、以下に当てはまる方にはFreestyleリブレの使用がおすすめできます。まずはお気軽に当院までご相談ください。

  • 血糖の変動が大きく、1日複数回血糖測定を行っている方
  • 血糖の変動を確認したい方
  • 低血糖を起こしやすい方・低血糖での入院経験のある方
  • 指先からの血糖測定で指を何度も傷付けたくない方
  • 外出先・職場などで指先からの血糖測定を行うのが難しい方

Freestyleリブレの特徴

いつでも、どこでも血糖値を測定できます

二の腕に500円玉程度の丸いセンサーを装着することで、センサーの中心部に取り付けられた極細のフィラメントが皮下に挿入されて、毎分グルコース値を測定します。
センサーに専用のリーダー又はスマートフォンをかざしてスキャンするだけで確認が可能です。

血糖値の変動が確認できます

血糖値の連続的なデータを測定でき、グラフとして表示されます。患者様ご自身が血糖の変動を把握することができ、今後の治療に役立てることが可能です。